山本和明(やまもと かずあき)
国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター 副センター長(特任教授)。
現在取り組まれている研究テーマについて教えてください。
19世紀日本文学の研究をしています。19世紀というのは日本では江戸、明治の時代で、1世紀の間には政治的な変革だけではなく、木版印刷から活版印刷へと印刷技術史的にみても大きな変化がありました。その変革期における「読本」と称する小説ジャンルの作品研究や、その享受史、山東京伝・仮名垣魯文という作家の研究をしています。
この時代の作者たちの雑食性とでも言える「知」への興味と、文物への考証趣味は、こののち主流となっていく小説群からは消えてしまうのですが、古典(江戸文学)と近現代文学を分かつメルクマールはこの考証趣味をどう考えるかにあると考え、周辺的な事象も含め確認することを心がけています。こうした研究をしていますので、江戸時代のオーロラは?などということにも興味が湧いてくるのです。
そのテーマを選んだ理由を教えてください。
高校の頃学んだ文学史には全く触れられてこなかった作品を大学の自主ゼミで読んだ時に面白いと感じたことがきっかけです。こんな面白いものがあるのに、なぜ文学史では単調な記述しかないのか、誰が文学史を記述し得るのか、とふと疑問に思ったときにそうした俯瞰的な視座を獲得するためには読まねば始まらないし、出来れば文学史を書き換えたいと思ったことが始まりです。
やりがいや魅力を感じるときはどんなときですか?
作品を、作者が創る立場にたって読み、その元となった材料を探しだし、その作りざまを自分なりに解明できたと確信できたときでしょうか。「見ぬ世の友」という言葉がありますが、古き書物群から導かれる「知」のありようを理解することも至福の時と言えます。
逆に難しい、困難だと感じるのはどんなときですか?
困難と感じることと言えば、それは調べて行くなかで辿り着いた書物が、すでに亡失しているとか、個人所蔵で読むことが出来ないときでしょう。しかしそれも10年20年と時を経ていくと自然と手元に集まることもありますし、他の研究者によって明らかにしてくれることもありますので、それはそれで面白いものです。
今後、取り組んでみたいことは?
書物をめぐる人的交流に関する研究。
その他、伝えたいことがあればぜひ!
人文系の研究者は個人研究が中心で、他分野の人と交流することがなかなかないですが、他分野とのセッションや共同研究はやってみると面白いし、自分の研究を相対的に見詰めることが出来るよ!って言いたいかな。
研究テーマに関心のある学生に向けてメッセージをお願いします。
貪欲なほどの好奇心が研究の芽を見いだします。何を研究するかに固執してしまうと、その研究の出来ない(出来にくい)環境になると、途端に研究しなくなるものです。何かを明らかにしようとする好奇心とそれを持続する志が大事!かな。(←自分に言い聞かせています)
日頃のリフレッシュ方法は?
車を運転することです。今は東京で生活していますが、自宅が兵庫県にあるので月に1、2度は車で往復しています。片道550キロの運転はなかなか集中できて良いです。
休みの日はどんなことをして過ごしていますか?
大学で教えていたときからの癖で、日曜には、パソコンたたいて調べ物しながら、録画していた深夜番組(アニメが多い)を視る、というか流す。