磯部洋明(いそべひろあき)
京都大学大学院総合生存学館/宇宙総合学研究ユニット(准教授)
現在取り組まれている研究テーマについて教えてください。
専門は宇宙物理学で、特に黒点、プロミネンス、太陽フレアなど、太陽のさまざまな活動現象の研究をしています。理論・数値シミュレーションと観測データの両方を合わせて、現象の背後にある基礎的な物理過程を紐解いていくのが好きです。
太陽の活動はオーロラの原因でもありますが、実は太陽のフレアとオーロラ爆発には共通の物理過程が多いので、その点でもオーロラ研究者との共同研究は面白いです。
数年前から、宇宙に関する学際的な研究の開拓、というのもやっていて、人文社会系の研究者と一緒に、宇宙人類学や宇宙倫理学などの新しい研究領域を始めたりしています。古文献を使った過去の太陽活動・オーロラの研究もその流れで始まりました。
そのテーマを選んだ理由を教えてください。
宇宙に興味を持ったのは、子どもの頃に本で赤色巨星の絵を見て、「世の中にこんなにおおきなものがあるのか!」と恐怖とわくわく感の混じったような感情を持ったのがきっかけです。大学に入った時はビッグバンや素粒子といった、「宇宙の究極の姿」に関心があったのですが、3回生の時に太陽の観測動画を見てその迫力に引き込まれ、4回生の時に大学院でも指導教員となる柴田一成先生に師事して、物理学を使って現象を理解する面白さに開眼し、太陽物理学を専門にしました。
太陽活動とその地球への影響といった複雑で多様な問題を研究しているうちに、だんだんと「宇宙の究極の姿」から「宇宙の複雑で多様な姿」に関心が移って来ました。この宇宙の中で特に複雑で多様なものといえば、生命、そして人間の営みです。実際、宇宙生物学という研究分野が近年盛んになってきています。宇宙物理学、宇宙生物学とくれば、次は人間研究たる人文社会系が面白くなるはず。誰もやっていない新しいことがやってみたい、という思いもあり、人文社会系を巻きこんだ宇宙研究をやるようになりました。
やりがいや魅力を感じるときはどんなときですか?
新しい研究テーマについて考えてる時が一番楽しいかな。
逆に難しい、困難だと感じるのはどんなときですか?
うーん、研究に関して言えば難しいとか困難とかいうのは、それがあるからこそやりがいや魅力があるようなものでもありますね。
今後、取り組んでみたいことは?
いろいろあるのですが、一つあげるなら、岡山県にあるハンセン病療養所の長島愛生園にあった天文台と気象観測所の活動の調査を少しずつやっています。
この記録をまとめてきちんと後世に残すものにしたいと思っています。
研究テーマに関心のある学生に向けてメッセージをお願いします。
自分の専門分野にとらわれずに視野を広げたら、面白いテーマがたくさん転がってます。一緒に面白いことやりたい人歓迎です。
日頃のリフレッシュ方法は?
本の世界に没頭するのと、休みの日に料理しながらビール飲む、銭湯に行く、出張ついでに知らない街をぶらぶら、くらいでしょうか。
休みの日はどんなことをして過ごしていますか?
これといった趣味はないです。まだ子どもが小さいので休みといっても主に家事と子どもの世話です。
趣味と仕事が半々くらいの活動としては、科学コミュニケーション活動の延長で、お寺で宇宙学とか、宇宙落語とか、宇宙茶会とか、宇宙とアートとか、宇宙といろんなものをくっつけたイベントをよくやります。