岩橋清美(いわはしきよみ)
国文学研究資料館古典籍共同研究センター 特任准教授

現在取り組まれている研究テーマについて教えてください。

専門は日本近世史です。村の由緒書や地誌などを通して当時の人々の歴史意識や地域認識について研究しています。江戸時代の村人たちの知識形成過程を地域社会との関係から考えています。
最近では、天保の飢饉を事例に、村人たちが自然災害から村を守ろうとした取り組みやそれを支える思想について調べています。

そのテーマを選んだ理由を教えてください。

学生の頃に自治体史編纂のアルバイトをしていたことがきっかけです。当時、市役所の職員の方や編纂担当の先生方と古文書を所蔵しているお宅を訪問し、古文書をお借りして整理し目録をつくるという作業をしていました。そのときに村のはじまりや伝承を書いた史料をいくつか見つけました。これらの史料は歴史事実を確定するには不向きとされていたのですが、その内容が面白かったので、「どうして、こんなことを書いたのだろうか」という疑問から、「村人が自分たちの歴史を書きのこす意味」を考えはじめました。

やりがいや魅力を感じるときはどんなときですか?

専門の異なる皆さんとおしゃべりをしていて、ふと、新しい方法が思い浮かんだとき。最近では、オーロラ関係史料の解釈をめぐる理系と文系の違いがとても刺激的です。

逆に難しい、困難だと感じるのはどんなときですか?

思いもよらない史料がみつかったり、あるいは、探しても探しても史料が見つからないときでしょうか。でも、そういう時に面白い展開になることもあります。

今後、取り組んでみたいことは?

東羽倉家文書(東丸神社所蔵)に見る京都・伏見地域の自然環境の変遷

研究テーマに関心のある学生に向けてメッセージをお願いします。

私が調べていた村の由緒書は、史実とは違う記述が多く、歴史事実を確定するには不十分なものでした。けれども、それが逆に、江戸時代の村人が「何を思って生きていたのか」を考えるにはとても有効で、記述の背景を探っていくことで研究が広がっていきました。このテーマに限らず、史料を多角的に分析することが大切かなと思います。

日頃のリフレッシュ方法は?

とくに、これといったものはないのですが、このプロジェクトに参加してから、近所にあるJAXAの展示をよく見に行くようになりました。小学生と一緒に人工衛星やロケットを見ています。

休みの日はどんなことをして過ごしていますか?

地域の博物館や資料館の企画展示を見て歩き、担当の学芸員さんやボランティアの皆さんと楽しくおしゃべりをすること。

サムネイル画像:猿猴庵随覧図絵(国会図書館所蔵)