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早川 尚志
京都大学大学院文学研究科(院生)

現在取り組まれている研究テーマについて教えてください。

14〜17世紀の中東や中央アジアの交通システムについて研究しています。いわゆる「シルクロード」を伝ってヒトやモノなど、どんな交流が行われたかはこれまでも広く深く研究されてきましたが、それらが「どんな道を通って」「どのような手段で」ユーラシア大陸を東西に伝って行ったかは意外と研究されていません。このような交通システムを押さえることはネットも電車もなかった時代の国々にとって広い領土を治めるために必要不可欠で、その当時整備された駅伝制は1日に200km以上のハイスピードな情報伝達を可能にしていました(現在でいうと、駅やガソリンスタンドが一定間隔であるような感じで替馬用の駅が一定間隔であったからこそ達成できたようです)。

こういう研究をしていると、砂漠や乾燥地が広がり、旅しづらい当時の内陸アジアの気候がどうだったか自然と気になってきます。例えば、この時代、今は消滅しつつあるアラル海は存在しなかったという記述があり、湖底からも当時の遺跡が出土しています。気候が違えば、思い描く地図も変わってくるということです。そのため、当時の気候を左右した太陽活動を知るためにも、オーロラの研究は興味あるところです。

本業の歴史研究の傍ら、このプロジェクトでは、古文献を使ったオーロラの研究もしています。紀元前567年にメソポタミア(!)で最古のオーロラが観測されて以来、オーロラはユーラシア各地で観測されています。中国や日本でも太陽活動が盛んなときはオーロラが見えたようで、逆にオーロラの記述を追うことで望遠鏡のない頃の太陽活動を追跡することが出来ます。今までとは違う目線で史料を読むことで、新たな事実が分かるのは心躍るものです。

そのテーマを選んだ理由を教えてください。

中東や中央アジアというと「シルクロード」のイメージが強いでしょうか。ヨーロッパや中国と違ってイメージのつかない、場合によっては「危険」というイメージしかないこの地域がどんな場所か漠然と好奇心がありました。2011年に試しに現地に行ってみて、そこの文化、住民、歴史に魅せられたのがこの研究の始まりになります。

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やりがいや魅力を感じるときはどんなときですか?

現地を訪れて得た直感が、いくつもの歴史書を紐解いているうちに実証できた時、そこから今まで分からなかったものの姿が明らかになった時でしょうか。
現代日本とは時代も場所も全く違う世界を実感できたときの喜びには代えがたいものがあります。

逆に難しい、困難だと感じるのはどんなときですか?

今まで注目されてないことに目をつけても、それが注目されていないのにはそれなりにわけがあってのことです。そうそう上手くは行きません。かといって先学と同じようなことをやろうとしても、蓄積ある巨匠を差し置いて面白いことはそうそう言えません。さらにこの分野、扱わないといけない言語の数がテーマ次第でいくらでも増えて行きます。現地人でない身で意味のあることを言うには一工夫も二工夫も必要です。

研究テーマに関心のある学生に向けてメッセージをお願いします。

未知の分野に踏み込んで行くのは、案ずるより産むが易しです。こんな記録見つけた!って方は御一報下さい。

今後、取り組んでみたいことは?

気候変動と交通路の変遷の関係性

その他、伝えたいことがあればぜひ!

百聞は一見に如かず

日頃のリフレッシュ方法は?

散策。よく自転車であてもなくさまようときがあります。場所を変えて初めて見えてくるものも少なくありません。

趣味(休みの日にしていること)はなんですか?

ちょっと足を伸ばして今まで知らなかったとこに自転車で行くことでしょうか。